弁護士のメモ帳 相続編 Vol.1

>

このメモ帳では、当事務所の弁護士が実際に関与した案件などを参考に、相続問題や不動産問題についての話題を綴ります。

 今回の話題は、当事務所にて多数扱っている相続のお話。当事務所では、常時20件ほどの相続事件を扱っています。

 ご両親が死亡し、子供たちが相続人となる場合、子供たち(兄弟姉妹)で遺産分割の協議をすることになります。その際にしばしば問題になるのが、親の面倒を看てきた子の扱いをどうするかという点です。

 親の面倒を看てきた子は、「これだけ大変な思いして面倒を看てきたのだから、当然ほかの兄弟より多くもらえるよね?」と考えていますし、反対にほかの兄弟は、「たしかに面倒を見てもらったけど、親と一緒に暮らしていて良い思いもしたはずよね。やっぱり遺産は平等に分けないとね。」と考えていたりします。

 民法では、法定相続分という各相続人の取り分が決まっていますが、「寄与分」という制度があり、「親に対して特別な貢献をした相続人は他の相続人よりも多く遺産をもらえる」ということになっています。これだけ聞くと、「それは当然だよね。法律も一般市民の感覚と同じなんだね。」と思われるかもしれませんが、実際はそう簡単ではありません。

 実際に「寄与分」を認めてもらうには、「特別な貢献」をしなければならないとなっており、この「特別」という点がくせ者なのです。

 現在の一般的な解釈では、単に親と長期間同居してきたとか、老後の親の世話をしたというのでは足りず、「親子の扶養義務を超えた貢献」が必要とされています。具体的には、要介護2以上の健康状態の親と長期間(1年以上など)同居をして面倒を看てきたといった事情があって初めて寄与分が認められます。また、たとえ他のきょうだいが親の面倒を全く看ず、相続人の一人だけが面倒をずっと看ていたとしても、それだけでは「寄与分」は認められません。

 「寄与分」という制度自体は市民感覚に合致した制度なのですが、実際には市民感覚からかけ離れた解釈がなされ、なかなか認めてもらえないのです。当事務所では、依頼者が比較的健康な親と長期間同居し、他のきょうだいは親と没交渉だった事案で、裁判所に対し、「当方の依頼者はずっと親の面倒を看てきた。一方でほかのきょうだいは、親に寄り付かなかった。このように相続人間でバランスを欠くような場合は、やはり特別な貢献があったとして、寄与分を認めるべきだ。」と主張したことがありましたが、裁判所には受け入れられませんでした。

 現在相続法の改正が検討されているようですから、この点が改正によって解決すればと期待しています。

 このような事態を解決する方策は、やはり「遺言」しかありません。ご両親に「遺言」を作成してもらい、親の面倒を看た子により多くの財産が引き継がれるようにしてもらうということです。

 親に「遺言」を作るように言うのは抵抗があることかもしれませんが、当事務所では、「遺言」作成のアドバイスも行っておりますので、是非ご相談下さい。

(案件の説明は匿名で、またわかりやすくするため事案を多少デフォルメすることもあります)

UA-40268731-2